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『揺れるプール』

コンピューターに向かってキーボードを叩き続けていたそんな時、私はふと、プールの匂いをかいだような気がした。

懐かしさなのかそれとも、暑い夏からの逃避を望んでいたからか。私は思わず見えるはずのない、水色に揺らめく柔らかそうなプールを探して辺りを見回し、足の裏に真っすぐに伝わってくる、あのプールサイドの固い感触を感じてみようとした。しかし私の隣の席では、何事も変わらなかったかのように、同僚が一心にボールペンを走らせているだけであり、私はただ、自分が一人取り残されてしまったような、そんな沈み込んだような気分になっただけだった。

幻想か、それとも、何かの予感か。不思議な感触はすぐに消え、半分地下に沈み込んだような構造の講師室の中でひとり、私は別の世界を知ってしまった異邦人のように、ただ手を止めてしばしの時間、その余韻を楽しむこと以外には何も手につかなくなってしまったのである。

なぜあのような感触が、懐かしいプールの塩素の香りと共に、私を包むことになったのか。真相などわかるはずもないが、しかし、紛れもなくあの時私は、何となくクールで妙に懐かしい、プールで遊んでいたようなあの頃の時間と空間の接点を超えて、まるでその中にいることが当たり前のことであるかのように、爽快感よりもむしろ充実感を感じながら、透明感のある揺れる情景の中へ、一瞬にして沈み込んでいった。

2005年08月02日

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