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『たった一言』

嘘をついているのなんて、最初からわかっていたけれど。

そんなの嘘に決まってる、とか、だまされている、とか、でも、最初からそんなことはわかっていて、私が求めていたのは、そうじゃなくて、ただ、それでいいのよって、そうやって背中を押してもらいたかっただけ。

自分でも、考えれば考えるほど、やっぱり否定的になってしまうから、誰かに後押ししてもらいたかっただけ、だから電話をかけただけ、真夜中に呼び出したり、そんなことが迷惑なことくらい、わからないわけじゃないけれど、どうしようもなく、自分の気持ちに整理がつかなくて、あの人を否定してしまう自分が情けなくて、それで、自分の気持ちを肯定してほしくて、そして、ちょっと相談してみただけ、でも、誰も、そんな気持ちはわかってくれない。

本当はそれで当たり前、なにをされても、ずっと信じているだけなんて、まるで馬鹿みたい。たった一言、それが演じられたものかもしれないとすら、たぶんわかっていたけれど、たった一言、それが本心ではないかもしれないなんて、気にしないつもりになって、それはすぐわかるような嘘だったけど、ずっと気付かないふりをしていただけ。

それでも、たった一言。たった一言をあの人が演じることすらなくなって、自分の愚かさがやっとわかった。

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