『樹』ふと空を見上げたら、たいして青くもない空に、新緑の木の葉の茂みを貫いて、真っすぐな朝日が透明に通り抜けていた。 本当はそんな都会の緑だって、絶え間のない人混みの活気に疲れ、排気ガスをまき散らす、傍若無人な車に辟易し、大空に腕を伸ばしては、空を小さく切り取って、固められた大地の解放を訴え、植物の本質などまるで理解できない、万物の霊長気取りの小賢しい、人なる存在に木陰を与えるだけの存在に甘んじ、しかしそれを望んでいるわけではなく、森や林の中で、仲間たちと一緒に大地でつながって、自らが木陰の一部となることを望み、騒々しく生きることしかできない、動物という存在を静かに見守り、ほんの少しずつゆっくりと、生命を全うすることが生きることで、種という賢明なる手紙をばらまいては安定を得て、執着という病理を持たず、ずっと長い間保ってきたものを守り、疑問などを抱くはずもなく、時には自らのその身体に、賢者の実という本質を実らせては、つぎつぎとつぎつぎと、繰り返すことの大切さ、積み重ねることの価値、そういった静かなものを、じっと黙って広げてゆく。 囲んで生きてゆくことが本質、抱いて揺さぶることこそ日常、しかし汚れた都会の緑は、切り離され、怯え、風にそよぐ緑色の音は既に乾き、濡れて艶めくのは、偶然の雨に降られた時だけで、その美しく静かな内質は、ごくまれに取り戻せるだけで、それでも、幹の内では泣きながら、根を少しでも強く張り、自分の仲間を探し求め、大地を貫いて、地中へと地中へと、人の知ることのない安定の中へと、音を立てずに伸びてゆき、終いには誰も、忙しく生きて死んでゆく、動物という儚い生命が途切れた後でも、緑は土の一部となり、風のなすがままになびき、涼しげな陰をいつまでも、いつまでも守り続ける。 2005年04月22日
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